遺伝構造の欠落したハイイロガン

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Lack of genetic structure in greylag goose (Anser anser) populations along the European Atlantic flyway

Irene Pellegrino et al. PeerJ 3(8) September 2015

ヨーロッパ北西部のハイイロガン個体群は、着実に増加しつつある。しかしながら、オランダで繁殖する個体は、主に、渡りはせず定住性と考えられ、これらはスカンジナビアあるいはドイツ北部から越冬地に飛んで行く、つまりフランスを超えスペインまでである。本研究は、これらの鳥の遺伝構造を決定すること、そしてハイイロガン個体群の混合様式評価を目的とする。我々はミトコンドリアDNAと、ノルウェーとオランダの繁殖地からフランス北部と南西部の中継・越冬地までヨーロッパ大西洋経路に分布する個体からのマイクロサテライトを利用した。ミトコンドリアDNAのマーカーは、23個の異なるハプロタイプを示した。ノルウェー、フランス北部、オランダで採集した個体間の遺伝的距離は近い(0.012–0.013)。フランス南西部の個体は、その他の全ての採集地域と比べかなり遠い遺伝的距離(0.018–0.022)示した。同じ地理的地域の全ての個体を含めた近隣結合法による系統樹であっても、単一のクレード群は示さず、各サイトからの個体は異なる分枝に見られる。14個のマイクロサテライト(169個体)のベイジアン クラスタリングは、地理的に別個のクラスターを検出せず、そして遺伝的に非常に近縁なノルウェーの繁殖地域を除き、全ての調査地域の個体において高い遺伝的混合が記録された。ベイズ推定による渡り率の推定は、現在のハイイロガン個体群の混合という筋書きの確認と推定する。

考察
本報告はフランスの全ての越冬地とオランダにおけるガン類のmtDNAと核DNAが低い遺伝的変異であり、ノルウェーの繁殖地においてはmtDNA変異はかなり低いことを示している最初の大規模研究である。ハイイロガンの遺伝的変異が低いことは20年前既に報告されており、カモ科においても他種ガンでも同様に見える。